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14話 新生活の始まりと、獣人との契約

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-08-01 07:00:58

♢新居の夜

 実際、上空から確認した限りでは、あの森はかなり広大だった。魔物の討伐も――まあ、無理に殲滅しなくてもいいか。殲滅自体が不可能ってわけじゃないけれど、依頼主が「それは無理だ」と言っているなら、そういうことなんだろう。

 ……なら、被害が出ない範囲で、定期的にのんびりと討伐していく方が現実的だな。

 その後、俺たちは獣人の長老といくつかの条件を取り決めた。

 村および森への出入りは自由

 獣人の村の存在は他言しないこと

 他の人間を連れてこないこと

 討伐は最低でも月に一度は行うこと

 滞在中は村から食料の提供があること

 互いにこの約束を交わすと、長老は静かに頭を下げ、深々とお辞儀をしてからその場を去っていった。

「なあ〜アリア……あれ?」

 ユウヤがアリアがいた方を見ると、すでに姿が消えていて家のドアが開いていた。

(この家が、相当気に入ってるな……。)ユウヤは苦笑しながら、自分も部屋を見てみることにした。

 家具まで揃っていることに少し違和感がある。

(何かあった家なのだろうか?普通は引っ越すなら家具も持っていくはずだ。)

 まあ……引っ越しの記憶は前世の時のものだから、この世界での常識じゃないのかもしれない。ただ運ぶのが大変で、家具を置いて行くのが普通だとしたら納得もできる。引っ越し先に家具があるなら持っていく必要もないってことなのかも。

「へぇ〜ソファーにキッチンに箪笥にベッドまであるのか」

 ユウヤは、その設備の充実ぶりに驚きながら部屋を見回した。

「掃除してたけどキレイだったよ」

 アリアが満足そうに胸を張って答えた。その表情は、まるで自分の手柄のように誇らしげだ。

「そうだ。俺は、ここに泊まっていくわ。夜に魔獣が活発になるし、ちょっと様子見もかねてなぁ〜」

 ユウヤは、魔獣討伐という名目で、今夜はこの家に泊まることを決めた。

「あ〜ずるいぃ〜わたしも泊まるっ」

 アリアが目を輝かせ、ユウヤに駆け寄ってくる。その小さな体は、泊まりたいという気持ちでいっぱいだ。

「いやぁ……ダメだろ?親御さんの許可がないと。俺は一応、冒険者になって一人前として自由に行動できるけどさ」

 ユウヤは、少し困ったようにアリアを諭した。頭を掻きながら、どう説明したものかと考える。

「むぅ……わかったぁ……ううぅ……」

 アリアは残念そうにムスッとした表情で、頬を可愛く膨らませていた。その仕草が……いつ見ても可愛い。

「ま〜許可が取れたら、明日にでも泊まれば良いんじゃないか?しばらくは、俺、ここで暮らすつもりだし」

 ユウヤがそう言うと、アリアの表情は一気に明るくなった。パッと顔を上げ、期待に満ちた瞳でユウヤを見つめる。

「そうだね。うん。分かった♪依頼だしね〜」

「明日も、同じ場所に時間に迎えに行くからな?それで良いかな?」

「はぁ〜い♪あ。ユウくん夕飯は、どうするの?」

 アリアが『ハッ』と気づいたように尋ねてきた。その瞳は、ユウヤの生活を気遣う優しさに満ちている。

(あ……。全く考えてなかった……。)まあ……買い溜めしたパンと昼の残りがあるし大丈夫だろ。

「何とかなるかな。大丈夫だって」

 ユウヤは、適当にごまかそうとした。

「もぉ……何とかって、我慢する気でしょ〜?ダメだよ。ちょっと待っててね、作っちゃうから〜」

 アリアは、ユウヤの言葉に呆れたように首を振り、キッチンへ向かおうとした。その時、ドアをノックする音が聞こえた。ユウヤがドアを開けると、そこには、銀髪の少女がカゴを抱えて立っていた。カゴの中には、野菜と肉が入っているのが見えた。

「んっ!」

 少女はムスッとした顔で、持っていたカゴをユウヤに突き付けてきた。そんなに嫌なら断れば良いのに……。でも、孤児の子だと聞いた子だよな?だったら育ててもらっているなら断れないかぁ。

 少女はムスッとした表情だったが、部屋の中をキョロキョロと見回し、目をウルウルとさせて何も言わずに走って帰っていった。その様子からは、何かを言いたげな感情と、少しばかりの戸惑いが感じられた。

「ユウくん?誰だったの〜?」

 キッチンからアリアが聞いてきた。ユウヤは少女から突きつけられたカゴを受け取り、キッチンへ向かいアリアへ渡した。

「村長から食料の支給だと思うよ」

「わぁ〜野菜にお肉だ。こんなにいっぱい貰えるんだ……明日から頑張らなきゃね!」

 アリアは、カゴの中身を見て目を輝かせた。その声は弾んでいて、やる気に満ちている。

「だなぁ」

 ユウヤは同意しながら、テキパキと必要な分だけを使い、余った食材は収納に仕舞った。

「うん。よし、出来たぁ〜♪」

 アリアが満足そうに手を叩いた。その顔には、達成感が浮かんでいる。

「ありがとなぁ」

 ユウヤは、アリアの作ってくれた夕食に感謝した。

「じゃあ……わたし、そろそろ帰るね……」

 アリアが、少し寂しそうな顔で帰宅を告げてきた。その瞳は、名残惜しそうにユウヤを見つめていた。

「そんなに、寂しそうな顔をするなって。普段と変わらないだろ?明日の朝に迎えに行くって」

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